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2022年度 2学期始業式 高校校長訓話

 おはようございます。2学期の始業式にあたり話をします。
 皆さんはこの夏休み、1学期の終業式でお話しした「失敗を恐れない前向きな気持ち」を持って過ごすことができたでしょうか?社会情勢を見ると、依然コロナ感染症の拡大が顕著であり、その勢いが過去を上回るほどのものとなっています。取り戻しつつあった日常が、またしても制限や中止という波にのまれてしまうのかという危機に瀕していると言っても過言ではありません。引き続き警戒を緩めることなく、我々の大切な日常を全員で守っていくという気概を持ってこれからの2学期の日々を過ごしてくれることを期待しています。

 この夏は猛暑や大雨などの異常気象の影響もあり、体調やスケジュールの乱れによるネガティブな影響を引きずってしまったという人も多いかもしれません。いつも言っているように、1秒でも過ぎればそれは「過去」です。決して取り戻すことはできません。しかし我々人間には、過去の成功した経験や失敗の反省を活かして「今」を変えることによって、「未来」を変える可能性を得ることができます。一人ひとりの未来を形づくる、そして変えていくための未知なる場所への扉の鍵は、未知なる場所やどこか遠いところにあるのではなく、待っていれば自然に風が運んできてくれるものでもなく、誰かが持ってきてくれるものでもなく、そして過去に埋もれてしまっているのでもなく、… 「今」の自分自身が作ることができるかどうか、少なくとも作ろうという努力をできるかどうかにかかっているのです。つまり人は、「過去」の経験を糧とした「今」の心の持ちようによって、いくらでも「未来」をよい方向に変えていくことができる可能性があるのです。ぜひこの夏休みに感じたこと、経験したこと、うまくいったこと、うまくいかなかったこと、それら全てを自分自身の大切な「今」として、今後の糧にするという気概を持ってください。文化祭の経験は、よい体育祭を作り上げる上でかけがえのない支えとなります。サマーキャンプ・学習合宿や校外学習、そして海外への短期留学のプログラムの経験は、有意義な研修旅行の実現に向けて大切な土台となります。猛暑の中取り組んだ部活動の経験は、必ず実りの秋を迎える上での大いなる糧となります。高3の皆さんは、二次試験祭りやプレトライアスロンⅡの経験が、秋のオープン・実戦模試や年末の共通テスト対策向けてこの上ない礎となります。ぜひ暑い中頑張ってきたそれらの貴重な経験の中で感じたこと、触れたこと、楽しかったことや悔しかったことなど、この機会に全てをしっかりと振り返り、「今」の自分の原動力にすべく正面から向き合ってください。そしてアドレナリン全開でこの2学期を元気に駆け抜けてくれることを期待しています。

 

 ところで皆さん、「アドレナリンが出る」などという言い方をよく聞くと思います。ご存知のとおり、アドレナリンとは副腎髄質から分泌されるホルモン物質であり、戦うか逃げるかの反応において重要な役割を担います。血中に放出されると心拍数や血圧を上げ、瞳孔を開きブドウ糖の血中濃度(血糖値)を上げる作用などがあり、勝負どころにおいて自分でも信じられないぐらいの力を産み出す原動力であると言われています。皆さんはこのアドレナリンを意識的に出す方法があることを知っていますか?場面によって勝手に出たり出なかったりするものというイメージがあるかもしれませんが、実は意識的に出す方法もあるようなのです。いくつかあるようですが、本日は3つ紹介します。1つ目は、「何事にも達成できるかどうか微妙なラインの目標を設定して取り組む。そしてそれを周囲に公言する」ということです。簡単すぎず、難しすぎない目標を設定して、それに向けて取り組んでいる時間は基本的にアドレナリンが分泌されて、よい高揚感のもとで取り組むことができるようです。さらにそれを周囲に知ってもらうことで、緊張感とともに自身のアドレナリンスイッチも入るようです。2つ目は、「何事もゲーム感をもつように心がける」ということです。皆さんはゲーム好きですよね?先ほどの話しともリンクしますが、簡単すぎず、かといって難しすぎるわけでもないというゲームには、より没頭すると思います。ゲームは、それぞれの世界観の中で、短期的・中期的・長期的に目標・目的が散りばめられており、そもそもその構図が我々の目標達成欲求を促すものですが、ぜひ皆さんの学習や部活動の取り組みの中にも、競争や報酬といったゲーム感を感じられるようなファクターを組み込んでみてください。アドレナリン出まくりですよ。3つ目は、「何かを始める際に声を出す」ということです。大きな声を出すことは、意識的なアドレナリンの出し方です。試合前に大きな声で掛け声をすることで、士気が高まり、緊張感が高まり、アドレナリンが分泌され、いつも以上の力を発揮することができるようにもなります。 またカラオケなどで大きな声で歌うと高揚感が高まってきますよね。カラオケで思いっきり歌った後にスッキリするのも、アドレナリンの効果だと言われています。つまり、カラオケもアドレナリンの意識的な出し方の一つであるということになるようです。

 

 さてもう一つ、脳内の神経伝達物質の一つで、「幸せホルモン」とも呼ばれる「セロトニン」を知っていますか?精神を安定させる働きをすることに加えて、生体リズム・神経内分泌・睡眠・体温調節などに関与するようです。人が安定した取り組みを維持していく上では、先ほどのアドレナリンだけではなく、心を落ち着かせる作用のあるこのセロトニンの働きは欠かすことのできないものです。実はこのセロトニンについても、意識的に分泌を促す方法があるのです。それは「陽の光をあびること」です。精神の安定を保つのに必要とされるセロトニンは、日光にあたることで多く分泌されるようです。秋になり日照時間が少なくなると、セロトニンの分泌が減ってしまい、それを補うために、たくさん食べて糖質・乳製品・肉などの食物からセロトニンを得ようとすることが増えてきます。つまり日照時間が短くなる季節ほど人は食欲が増すということで、それは精神の安定のためにセロトニンを求める行動でもあると言えるかもしれません。『食欲の秋』と言われるのはこういう部分も影響しているのでしょう。また「好きなこと」に臨んでいるときにはセロトニンが出て、人は精神を落ち着けることができるようです。「読書の秋」、「スポーツの秋」、「芸術の秋」などと言われるのは気温のことだけでなく、日照時間が短くなっていくにつれて、人がセロトニンを求めて、好きなことに打ち込む機会を求めることにも関係しているのかもしれません。誰でもできる心がけだと思いますので、ぜひ心に留めておいてください。

 

 暑い夏が終わって、その疲れが何となく抜けきらないままに今日を迎えている人も多くいるかもしれませんが、皆さんが元気にこの2学期を乗り切るために、日ごろのちょっとした心がけを重ねることで、ものすごく大きな後押しを得られるかもしれません。何事にも目標を明確にして、それを周囲と共有して、声を出して自分に節目の意識を植えつける…そんな日々の小さな心がけ、当たり前にできる心がけをしっかり積み重ねることで、皆さんは、勝負どころでの原動力を得られます。また陽がのぼっている時間に活動し、好きなことをする時間を大切にする、そのような当たり前にできる心がけをもつことによって、落ち込みそうなときの支えを自分で産み出すことができるのです。

 

 このような小さな心がけの積み重ねを通して、皆さんが大いに実りある2学期を過ごし、須磨学園の創立100周年という大いなる節目をみんなで盛大に祝い、数々の学校行事が皆さんの活気で満たされる…そんな素晴らしい2学期となることを心から期待しています。

2022年9月1日 高校校長  堀井 雅幸